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【2024/03/30 00:31 】 |
Sweet Devil
バレンタインネタ期間限定




「このチョコレート」

仕事を終えた、すでに太陽が隠れ月が顔を覗かせている時間。
主人であるシエル・ファントムハイヴがデスクの上に数個の箱を乗せた。
その箱の中身を彼はチョコレートだと言っていたが、それは言われずとも我が社のチョコレート製品なのだから見て分かるだろう。
いつもならばそれがどうしたかと怪訝な顔をしてしまうのだが、今日は違う。
セバスチャンは緩やかな笑みを浮かべて、はい、と返事をした。

今日は2月14日、バレンタインの日だ。
すでに恋人の仲になってから、両手では足りなくなってしまいそうなほどこの日を迎えている。
別にこの日に頼らなくとも互いの愛は常に感じている。けれどやはり目に見えて愛の形を貰えるのは嬉しいものだろう。
長く人間と一緒にいるせいで人間染みてきたなんていうため息も、とうに尽き果てた。

こちらからのバレンタインのチョコレートはスイーツの時間にフォンダンショコラを。
シエルの手の平くらいの大きさで、しかも二段重ねという普段では考えられないほどの量だ。
しかしこちらとしてはもっともっと大きくてもいいと思ってしまう。
それくらいシエルを想う気持ちは大きいのだ。

そして今、きっとシエルからのバレンタインチョコを貰えるのだろう。
年月を重ね、年齢も姿も青少年となったが、未だに細かい作業は苦手な彼。
以前、手作りに挑戦したものの酷い結果になった為、彼からはいつも自分の会社で作った…シエルが発案したチョコレートを
プレゼントしてくれる。
たとえどんな酷い見た目であれ、味であれ、悪魔である自分はなんとも無いし、嬉しいのは気持ちなのだから手作りでも構わないと
思うのだけれど、どうも彼としては許せないらしい。(しかしたまに時間を作ってはバルドたちと秘密に料理の練習をしているのを知っている)
手作りの方が嬉しい、なんて思われることもあるらしいが、やはり大切なのは気持ちの方だ。
あのプライドの高いシエル・ファントムハイヴがチョコレートをくれるだなんて、付き合い始めの頃は全く考えられなかっただろう。
たとえどんなものであったとしても、彼から物は本当に嬉しいのだ。

「あとこれと、これと、これも・・・」

チョコレートを貰える嬉しさを噛みしめているセバスチャンをよそに、シエルは引き出しから一箱だけではなく、数箱、いや数十箱を机の
上に重ねていく。
箱の山となりだしたデスクはまるで書類が積み上げられている時のようだ。

「あの、坊ちゃん?」

どんどん積まれていくチョコレートにセバスチャンは笑みを浮かべつつも、困惑した声で名前を呼ぶ。
自分のように『このチョコレートの量が僕の愛だ』と言われたら嬉しいが、シエルがそんなことを言うとは思えない。
ではこのチョコレートは何の意味が含まれているのだろうか。

「これも、と」

どうやら全部積み上げ終わったらしいシエルは長くなった髪を額からかき上げ、箱山の隙間から笑みを覗かせ…―――

「全部溶かしてこい」

そう命令した。




****




「チョコフォンデュでもする気ですかね…」

デスクの上に乗せられた沢山のチョコレートをキッチンまで運んでいったセバスチャン。
そして溶かし終えたそれを普段ならばパーティー用のスープ入れのお皿に入れて持って行く。

「しかしフルーツなどもご用意しておりませんし…」

若干湯気を上げている溶けたそれを見つめながらセバスチャンは首を傾げた。
冷やしてしまったら固まってしまうという理由もあるが、シエルに温かいままでと命令されたのだ。
そしてそれを先ほどの執務室ではなく、寝室へ…とも命令された。

悪戯もゲームも好きな彼のことだ。
今回も何か考えているに違いない。それは幼いころから変わらないところである。
しかし、このチョコレートで一体何をするというのか。
今までバレンタインデーの日に何もくれなかったということはない。自分のことが嫌いになった、というわけではないだろう。
もしそうならばスイーツの時間に言うだろうし、食べることは出来ないと律儀に断るに違いない。
ということは、このチョコレートが自分宛てである可能性は高いのだが…。
(分かりませんね)
シエルの“遊び”を見抜くのは難しい。
セバスチャンは結局なにも分からぬまま、寝室へと辿り着きノックした。

「坊ちゃん、持ってきましたよ」
「あぁ、入れ」

声を掛け、返ってきた返事。
それは愉しげな声であったが、どこか緊張しているような声音にも感じられる。
セバスチャンはより頭上にクエスチョンマークを浮かべながら扉を開いた。

「ご苦労だったな」

開いた扉の先には変わらない寝室。
シエルはベッドの上に腰かけた状態であり、窮屈だったせいか服の首元…タイを解きボタンも数個外している。
(少々目に毒ですね…)
ベッドの上で、まるで自分からボタンを外して誘っているかのような恰好にセバスチャンは内心苦笑し、
若干視線を逸らしながらベッドの近くの机へと歩を進めた。

「チョコレートはこちらに置いて宜しいですか?」
「いや、…あぁ、今はそこに置いておけ」

一瞬考えるような仕草をしたが、すぐにいつものように命令する。
それにセバスチャンは応じ、コトリと音を立ててチョコレートを置いた。

「なぁセバスチャン」

急に声の“種類”を変えてシエルはベッドを揺らし、まだベッドの脇…机の前に立つセバスチャンの顔を覗き込む。
スルリと落ちた髪が、ボタンが外れた素肌へと流れていった姿が妙に艶めかしい。

「どうしました」
「僕が何を考えているか、答えは出たか?」
「…いいえ、想像も出来ませんよ」
「珍しいな、お前が惨敗だなんて」
「貴方の遊びは突拍子もないですからね、分かった方が可笑しいですよ」
「それは嫌味か」
「そう捉えてくださっても結構ですよ」

ユラリと揺れた燭台の蝋燭も悪い。
歳を重ねた彼は色気があり、このような灯りや場所は全て彼を引き立たせるものでしかない。
もともと煽られていたセバスチャンは顔を覗き込んできているシエルの頬をそっと撫で、そして彼が口を開く前に唇を重ねた。

「っ…」

声さえ出さなかったものの、吐き出した息が悦びを教えてくれる。
最初は触れるだけ、そして少し離して呼吸の間を作り、そしてもう一度。
しかし今度は啄むように口付けて、そして相手の唇が開くのを待てば―――

「ん、」

あとは相手を想うままに舌を絡め合わせるだけ。
セバスチャンは上から流し込むかのように舌を口腔へ忍び込ませ、全てを暴くかのように舌で辿っていく。
彼の弱い所を悪戯に刺激すれば、まるで驚いて逃げる魚のように舌が口腔の奥へと戻ってしまい、その可愛さに口角が吊り上る。
薄っすらと目を開けてみれば、ギュッと目を閉じて与えられている口付けに耐えている顔が眼前に現れた。
その両手はベッドの上に置かれていて姿勢を保っているようだが、ベッドから乗り出した体制は辛いだろう。
セバスチャンは頬を包んでいた手を背中に回し、ゆっくりと膝を折って同じ高さにしていく。
同じ高さになればどんなに長く口付けていても辛くはないはずだ。
そう思ったのだが、同じ高さになったらシエルは口付けを解いてしまった。

「ふ、はぁ」
「ぼっちゃ、ん?」

互いの間に銀の糸がまだ繋がっている状態。
それをそのままにシエルは熱い息を吐き、潤んだ瞳を泳がせた。

「どうしました?」
「ちがう」
「え?」
「なぁセバスチャン」

先ほどと同じ呼びかけ。
しかしもっと甘えたような声で言葉を紡ぐ。

「今日は何の日だ」
「バレンタインデー、ですか?」
「あぁ」

一体何の問い掛けだろうか。
セバスチャンは疑問に思いつつも答えを返せば、シエルは頷いて先ほど置いたチョコレートに手を伸ばす。
そしてそのまま一本の指をチョコレートにつけた。

「ぼ、っちゃん?」
「甘いものが好きなのはお前も知っているだろう?」

茶色くなった指先。
トロトロとチョコレートが指先から落ちていく。
だがシエルはそれもお構いなしに自分の方へと持っていき、

「チョコレートが特に好きだ」

それを口の中へと含んだ。
ちゅ、と音を立てて吸われるソレに、セバスチャンは無意識に唾をのみ込んだ。
まさか、とは思うが、もうそれしか考えられない。
期待と、喜びと、欲望とがいっぺんに胸の中を暴れまわる。
「でも、もっと甘いものを知っているか?」
「・・・・」
「まぁお前は人間の食べるものなど味が分からないから、チョコレートよりも甘いものはと聞かれても困るだけかもしれないが」

口から指を抜き、クスリと笑う。

「僕にとってスイーツよりも、チョコレートよりも甘いもの…」
それは。

シエルはセバスチャンの手を掴み、先ほどのシエルと同じようにチョコレートに指一本をつかす。
ドロリとした感触。時間が経ったそれは生暖かい。
チョコレートがついた指を、また同じようにシエルは自分の方へと持っていき、

「お前だ」

ゆっくりと、口に含んだ。
チョコレートよりも熱い口腔。それと同じくらい熱い舌が指先に襲い掛かる。
まずは窺うように指先を舐め、けれどすぐに意を決したように指全体に舌を絡めた。
神経が集中している指先を舐められていること、そして己の指先を舐めているシエルを見ることによって触覚も視覚も犯されていく。

「っ」

スイーツよりも、大好きなチョコレートよりも甘いもの。
それがセバスチャン・ミカエリスだと彼は言う。
喜びと共に熱が身体の中に灯り、そして黒く汚れたものが胸の中を擽っていく。
欲望だけではとどまらない、独占欲と支配欲。
悪魔である自分はその気持ちが人間よりも大きいものだということを理解している。
だからこそそれを押さえ、シエルを壊さないようにしてきたけれど。

「お前は?」

綺麗に舐め終えた指を口から抜くが、こちらをより煽るように舌を伸ばして指を舐めあげた。

「お前にとって甘いものは?」

シエルはセバスチャンと目を合わせ、笑みを浮かべる。

「お前の大好きな魂よりも甘いもの」

そして眼帯を外し、服のボタンも外していく。
危うい手つきで、ゆっくりと、ゆっくりと。

「それは何だ?」

胸板までボタンを外し終えたシエルは、再び指にチョコレートをつけ、白いシーツに茶色を零しながらソレを心臓の上あたりに付けた。
その間もシエルの口元は弧を描いている。

心臓の上につけるなんて、なんて卑怯なんだろうか。
これでは試しているうちにも入らないだろう。
心臓とは人間にとって心というよりも生命、魂だろう。
魂よりも甘いものは何だと聞いているのに、たとえ魂であったとしても“大丈夫”なようにしてある。

(よわむし)

もっと己に自信を持てばいいというのに。
歳を重ねても、こういう弱さだけは変わらない。
愛されることに慣れない子供、その姿が未だに残っている。

「卑怯者」
「…いいだろう、これくらい」

遠慮はしない。
思ったことをそのまま口に出せば、シエルは拗ねたような顔をしてプイと顔を逸らしてしまった。
やはり子供染みた姿に苦笑する。

「別にお前の愛を疑っているわけじゃない」
「えぇ。分かっています」
「ただ、」

ただ。
そこまで言って止まってしまうシエル。
続きを促すように髪を優しく撫でてやる。
(あぁ、卑怯なのは私の方ですね)
こうやって撫でたらシエルが続きを言うことを知っているから。

「ただ…」
「ただ?」
「…これで、喜んで……」

もらえるのかって、ちょっと思っただけだ。


いつだって愛する相手は手作りのスイーツをくれる。
優しいキスと一緒に。
けれど自分は市販のチョコレートで。
どんなに練習しても料理はいっこうに上手くならない。
―――分かっている、大切なのは物じゃなくて気持ちだっていうことは。
けれど自分だって自分の手で何かをあげたい。
愛する気持ちを。
自分だって同じくらい、いやそれ以上に相手を愛しているんだと。


「…貴方っていう方は本当にッ」

最後の一撃と言っても過言ではないその言葉、そして想いにセバスチャンは表情を歪めてシエルの両肩を掴み顔を胸板へと近づける。
近づいた先から香るチョコレートと、シエル自身の匂い。

甘い甘い、
魂よりも甘い匂い。

「んっ、」

ベロリと、チョコレートがついている心臓の上を舐めあげる。
彼の言っていたように味は分からない。分からないはずなのに、酷く甘い。

「嬉しいですよ」

心臓の上から舌をそのまま首筋へと這わせ、心臓と同じように脈打つ場所に強く吸い付いた。
ここに咬みつけば、きっと彼の魂は自分のものになるだろう。
けれどそんなことはしない。
それは悪魔として、とても素敵なことに思えるけれど、そんなことをしてしまったら“嬉しくない”
“面白くない”“楽しくない”
なにより、“哀しい”

「魂よりも愛しい貴方を蝕す(食す)ことが出来るのですから」
甘い、という表現だけでは足りませんね。

顔を上げて欲望を灯した瞳を隠さずに上目で窺えば、シエルは安心したような、けれどすでに溶けきっている瞳でこちらを見返した。
そこには己と同じ期待の色が見えて、さらなる熱が内側に溜まっていく。

「全て、喰らって宜しいのでしょう?」
「…あぁ」

若干かすれた声。
頷きながら手を伸ばしてチョコレートに。

「全部…残さず、食べろ」

そのチョコレートをやっと今度は唇へ。

「喜んで…」

セバスチャンはそれに笑みを返し、愛に塗られた唇に咬みついた。



甘い甘い、
スイートの時間の始まり。



****



「…やる」
「え?」

次の朝。
午前中に接客の予定はないということで、腰が痛くまだベッドの中にいるシエルを同じベッドの中で甲斐甲斐しく面倒を見ていると、ベッドの下から我が社の製品とは違う箱を掴みセバスチャンに渡した。
その表情は酷く仏頂面で、逃げるように視線を別の方向へ向けている。

「あの、これは」
「…何も聞かなくていい。いいから受け取れ」
「ですが」
「命令だ」

よくある白い箱に青い紐で結ばれたソレ。
ラッピング…といえばラッピングとも言えるだろう。
もしかして、いや、もしかしなくともこれは。

「手作り、ですか?」
「…だから聞くなと命令しただろうが」
「それは執事の時だけ有効のものでしょう」

恋人が命令を聞く必要などありませんから。
そう意地悪く言ってやれば、本当に狡い悪魔だな、と舌打ちをしつつ頬を赤く染めながら枕を軽く叩いた。

「昨日の、その…アレを喜んでもらえなかった時のことを思って…作っておいた」
「…私が喜ばないとでも思ったんですか?」

今度こそ味は大丈夫だ、と呟いている彼の言葉には反応せずセバスチャンは目を細める。
まずシエルから貰えるものであるならば、なんだって嬉しい。
しかもそれが彼自身だなんて、これ以上ないものだ。喜ばないわけがない。
もっと自分の愛の大きさを分からせてやる必要があると、セバスチャンは目を細めたまま腰を引き寄せればシエルは焦ったように首を振った。

「ただ自分の安心の為にだッ!」
「それも結局は喜ばれないかもしれない、という思いからでしょう!」
「そういうわけじゃない!!」

シエルは腰を抱くセバスチャンの腕を掴み、必死に止めようとする。

「たとえチョコレートがついていたとしても、結局あれは“僕自身”だ。僕自身なら…その…いつも渡している」
「・・・・」
「だから、アレだとバレンタインのプレゼントにならないと言われたらそれまでだろう」

いや、それでもそんなことをお前が言うとは思えなかったが!!
あくまでその、色々女々しく考えてしまう自分の為にだなっ…。

シエルはセバスチャンの腕を掴んだまま必死に、それはもう必死にそういうことではないのだ、と説得しようとしている。
だからだろう、彼がサラリと凄いことを言ってしまったのに気が付いていないのは。

結局のところ。
魂よりも甘いものが本当に自分なのか。
こんなプレゼントで喜んでもらえるのか。
そんな馬鹿みたいなことで悩んでしまうのは、全て己を愛するが故にだ。
そのことを分かっていても、その破壊力を彼は解っていない。

無自覚、無意識は罪だ。
こんなにも悪魔の自分を甘さに狂わせていることに彼自身は気が付いていないのだから。

「貴方の方が悪魔ですよ…」
「ん?何か言ったか」
「こんな可愛らしい恋人がいると苦労すると言ったんです」
「はぁ?!」

思い切り声を上げたシエルを気にすることなく、腰を掴んだ手を際どい所まで下げていく。
昨晩…明け方まで抱かれていたその身体はそんな手の動きにも過敏に反応し、文句の言葉を吐こうとしていただろう口からは小さな吐息が漏れ出た。
ほら、それだけでこんなにも身体は熱くなる。

「坊ちゃんが頑張って作ってくださったチョコレートはまた後ほど大切にいただきますね」
「ちょ、待て、もッ…無理!」
「無理なのは私もです」

言っておきますが。

「誘っているのは、坊ちゃんですからね」


甘いその全てで。


否。






貴方のすべてが。





End




****
あとがき
ハッピーバレンタイン!ということで、甘い文章を書かせていただきました!
なんだか甘いものは久々で、本当に甘くなっているか不安www
期間限定文章、気に入ってくださった方様がいらっしゃったらお持ち帰りくださいな^^

そしてこの文章の中に『スイート時間』を隠しておりますww
(18歳未満様、苦手な方様は探しては駄目ですよ!)
携帯だとすぐに分かってしまいますが^^;

バレンタイン文章、少しでも楽しんでいただけますようにv

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【2012/02/12 12:27 】 | Text | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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