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【2024/04/18 18:09 】 |
願いを叶えて☆
04 フロックス/貴方の望みを受けます
(真っ赤な事件Ⅱ?)

あるところに、シエル・ファントムハイヴという、とても美しい少年がいました。
しかし見た目とは裏腹に性格はとても意地悪く捻くれもので、毎日悪さをしては、
お屋敷の人たちを困らせていました。

そんなシエルの元に現れたのは、セバスチャン・ミカエリスという悪魔でした。
シエルはセバスチャンを見た瞬間、恋に落ちてしまい、悪魔と契約を結んでしまいました。
セバスチャンはファントムハイヴ家の執事となり、シエルの身の回りの世話をすることとなったのですが。
毎日毎日シエルの猛烈な愛情アピールに、ほとほと参っているのでした。

「待てこら」
「もう何ですか坊ちゃん」

「なんだ、その話は」


― 願いを叶えて☆ ―


「嫌ですねぇ、坊ちゃん。私たちの愛のダイアリーじゃないですか」
「そんな人生を送ってきた覚えはないんだが」
「もしや坊ちゃん、もはや認知症ですか?」
「真面目な顔をして聞いてくるな、馬鹿執事が!」

シエルは机をバンっと叩く。
そんな様子をもろともせず、セバスチャンはニッコリと微笑む。
全く、こんなことになるんだったらコイツを呼ぶんじゃなかった。
痛む頭を押さえながら後悔する。


本来今の時間は、とある人物と商談をする予定だったのだが、
急遽用事が出来て来れなくなったらしい。
いきなり空いてしまった時間をシエルは持て余し、暇を潰すためにセバスチャンを呼んだのだ。
何かスイーツでも作らせようと思っていたのだけれど。

『では坊ちゃん、少し私の話しを聞いてみませんか?』
『お前の話し?』
『はい、あまり長くお話する時など滅多にないでしょう?』
『まぁ、そうだな』

シエルは、自分がセバスチャンとゆっくりお話をしたことがなかったことに気がつき頷く。

『一体何を聞かせてくれるんだ、セバスチャン?』
『では、私の大切なダイアリーを・・・』


そう言って、話しだしたのが冒頭の文章だ。

「もういい、下がれ」
「なっ!なんて酷いことを言うのですか!始まったばかりですよ?!」
「もう十分だ」

ピシャリと言い放つと、セバスチャンは半べそをかいてシエルの机に縋りつく。

「坊ちゃん!恋人に向かってなんですかっ!」
「恋人言うな!」
「恋人でしょう?!違うんですか?!」

みっともない顔をしながらシエルに迫るセバスチャン。
お前それでも悪魔か?と突っ込みたくなる。
けれど今の問題は。
僕とお前が恋人だとか、そう簡単によく言えるなっ!!!
シエルは顔を赤くして唇を噛み締めていた。

この二人はれっきとした恋人だ。
けれどそれを素直に言えるシエルではない。
しかし、半べそをかきながら聞かれたら・・・。

「・・・違わない・・・こともないかも、しれない」

プイっと顔を逸らしながら言うシエル。

「ツンデレ坊ちゃん!!」
「殺すぞお前!」

鼻血を噴出す執事を、シエルは思いっきり殴った。



****


「お前の妄想の前半は許してやる。だがな」

シエルは大きくため息をつく。

「猛烈な愛情アピールって何だ」
「その言葉の通りです。坊ちゃん」

先ほどまで泣きべそをかいていたとは思えない凛々しい顔で、シエルの机の前に立つ。
凛々しいといっても、ただ表情を変えていない普通の顔をしているだけなのだが。
どうやら殴られたことにより、少々反省したらしい。

「普通好きな相手には愛情アピールをする筈でしょう?」
「僕はしていない!」
「それですよ」
「は?」
「どうしてしてくださらないのです?」

セバスチャンはいじけたような声音で言う。

「恋人同士ならば、もう少し甘い雰囲気になってもいいかと思うのですが・・・」
「・・・」
「しかも坊ちゃん、ゆっくりお話したことがないのも先ほど気が付いたでしょう」
冷たい方ですね。

額に手を当てて、わざとらしくため息をついてくる。
そんな仕草にシエルはカチンとくる。
シエルだって本当は出来ることならば素直に甘えたいのだ。
まぁ、ゆっくりお話をしたことがないのに気が付かなかったのは置いておいて・・・。
きっとセバスチャンだって、シエルが素直ではないことに気が付いているはずだ。
なのに、あえて言葉として言ってくるということは。

素直になれない僕に嫌気が差してきたのだろうか。

セバスチャンは、黙って立っているだけならば容姿はかなり良いほうだろう。
しかも仕事も完璧ときた。
僕がかまわずとも沢山の女性たちからの声掛け、セバスチャンの言う猛烈愛情アピールを受けるはずだ。
ならば頑なな僕よりも、そんな女性と一緒にいた方が楽しいに決まっている。

「~~~~~!」

グルグルと考え出すシエル。
それを楽しそうに眺めている悪魔に、彼は気が付いていないだろう。
押して駄目なら退いてみろ、とはこういうことだ。

「あぁ、どうやら私は坊ちゃんを困らせてしまうだけだったようですね」
「っ!!」
「では私は・・・」
「待て!セバスチャン!」

そのまま振り返えろうとするセバスチャンにシエルは慌て、音を立ながら立ち上がる。

「あの、その・・・」

引き止めたはいいものの、どうしていいか分からず、しどろもどろになるシエル。
僕は一体ここで何と言えばいいんだ?!
慌てた状態で、またグルグルと考え出す。
『悪の貴族』と言う名を背負うシエルだが、このようなゲームはまだ不慣れ。
予想がつかない駒の動きに、思うように翻弄されてしまう。
結局出た戦略(答え)は。

「もう少し、ここにいろ」

なんとも味気ないものだった。


****


「あの、坊ちゃん?」
「なんだ」
「これはどういう?」
「いいから」
「ですが、これじゃぁ暇潰しにならないのでは?」
「黙って座ってろ」

シエルは動かずに言う。

『もう少し、ここにいろ』と言ったあと、シエルはまた少し考え込み、セバスチャンの手首を掴んで
どこかへと歩き出した。行き着いた先は書斎。
そこのソファーに、座れ、と短く命令した後、シエルも一緒にそのソファーに腰を下ろした。
セバスチャンの隣に。まさに、ピッタリとくっつく位近くに。
どういうつもりなのかと、目をしばたたせ次の行動を待ったが、一向に動きは見られない。

あれから10分近くも経っているのだが。

「坊ちゃん」
「だから何だ」
「少しくらい意図を教えてくださっても・・・」

隣にくっつくシエルを上から流し目で見ると、唇を尖らせ、分からないならいい、と反対側を向いてしまった。
だから、さっきから何なんですか!その可愛さパレードはっ!!!
っは!もしかしてこれは・・・。

「愛情アピール・・・ですか?」

ぼそりと呟いてみると、シエルの肩がピクリと反応する。
まさか、坊ちゃん。

「うるさいなっ!こんなもので悪かったな!僕なりに一所懸命、甘い・・・」

しぼんでいく声。
反対側に向けていた顔を正面に戻し、セバスチャンの方にポテリと傾き、頭を腕に預けながら

「甘い雰囲気に、しようとしてるんだ」

拗ねたように呟く。


どうやら坊ちゃんは私が言っていたことを気にして、坊ちゃんなりに愛情アピールをしながら、
甘い雰囲気にしようと努力しているらしい。
押して駄目なら退いてみろ作戦が成功した結果なのでしょうけれど。

可愛さがハンパないっ!!!

ここで鼻血を出してしまったら、坊ちゃんの努力が無駄になってしまう!
セバスチャンは鼻血が出そうになるのを、必死に我慢する。

シエルは、なんの返答もないセバスチャンに不安になったのか、セバスチャンを仰ぎ見る。
まさに上目遣いの形だ。

「やっぱり、駄目か?」

とどめは、恐る恐る聞きながら首を傾げる仕草。

あぁ、坊ちゃん。
もう我慢できません。


「坊ちゃん、嬉しいです」
「セバスチャン・・・ておい、お前!!!」
「私のことを考えてくださって・・・」
「鼻血!また鼻血出てる!」

いつかの日と同様にシエルはわたわたと慌てる。
しかし学習能力があるのが彼のいいところだ。

「セバスチャン!!」

シエルはポケットから真っ白いハンカチを取り出し、セバスチャンの顔に押し付ける。

「駄目です坊ちゃん、ハンカチが汚れてしまいます」
「放っておいたら、ソファーが汚れるだろう!別にいいから早く!」
「申し訳ございません・・・」

セバスチャンはシエルからハンカチを受け取り、鼻に押し当てる。
あぁ、坊ちゃんがあんなにも可愛らしく努力してくださったというのに・・・。
どんよりと自己嫌悪に浸っていると、シエルのクスリと笑う声が耳をくすぐる。
怒られるとばかり思っていたので、セバスチャンは目を見開く。

「愛情アピールはしない方がいいらしいな?」
「いえ、決してそういうことは・・・」
「だって、毎回していたらお前が出血死してしまうだろ?」

クスクスと笑いながら言うシエル。
悪魔なので、出血死はしないと思いますが・・・とは口が裂けても言えない。
あぁ、自分の責任で坊ちゃんからの愛情アピールを逃してしまうことになるなんて・・・。

「それに僕も」

少し俯きながら、言葉を続けるシエル。
そして。

「ドキドキしすぎて、心臓が壊れそうになるしなっ!」

顔を真っ赤に染めて怒鳴りがら言う。
セバスチャンは再び、どんよりとした気持ちになりそうだったのだが。

「坊ちゃぁぁぁぁぁん!!!!」

また大量な鼻血を噴出しながら、坊ちゃんに抱きつく。
ひぃ!!とシエルは声を上げ。

「田中、田中ぁぁぁ!!僕だけじゃ、やっぱり無理!助けてぇぇぇぇ!!!!!」

再びシエルの助けを呼ぶ声が、屋敷中に響いた。





END



******
あとがき
以前にUPした『真っ赤な事件』のパート2みたいなイメージで書きました。
鼻血を噴出す悪魔…格好悪いね…

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【2011/03/24 18:08 】 | Title | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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